今回のアメリカ大統領選挙における、巨大IT企業群による常軌を逸した言論弾圧は、はからずもスマホの世界にある構造問題を露呈させることになりました。
Twitter・Facebookによるトランプ大統領の永久追放によって、検閲を行わないSNSを標榜する「Parler(パーラー)」が一躍脚光を浴びましたが、これに対してアプリストアの運営元であるApple・Googleがストアでの配信そのものを禁止する措置を取りました。

このアプリストア運営側による検閲要求は結構深刻で、これをやられると、いくら検閲しないSNSが出てきても、運営元にシャットダウンされると一巻の終わりということになる。
つまり、スマホのOSがAppleとGoogleに独占されている弊害が、これまでおそらく考えられてこなかったであろう「政治リスク」として一気に表面化する形となったわけです。
これに対して、ポンペオ国務長官は、IT企業の集結するシリコンバレーに対して、中国との関係を断つよう警告を放っていました。
また、トランプ大統領もSNS企業に対して与えられている免責による保護を制限する大統領令に署名し、彼らの検閲行為に対して警告を送っていました。

つまり、彼らの言論弾圧行為は、これらの警告及び大統領令を無視した形で行われたわけであり、ポンペオ国務長官が議場乱入事件のあった1/6の前日に出された大統領令に基づいてアンティファ関連団体を国際テロ組織に指定し、トランプ大統領の再選が決まったあかつきには、反乱法の適用も視野に入れたかなり大掛かりな制裁措置が取られる可能性が高いと思われます。
トランプ大統領は、SNSによる自らの排除をあらかじめ予測しており、Twitterから永久追放される前の最後のツイートにおいて、「既に複数のサイトと交渉をしており、近く大きな発表がある。我々は独自のプラットフォームを作る可能性がある」と言及しています。
その際に、今回のParlerの件で露呈されたスマホのアプリ配信ストア、引いてはスマホのOSそのものの独占状態に対しても、何らかの措置を講じてくる可能性は否定できないと思われます。
トランプ政権が、今回の言論弾圧に関与した巨大IT企業群をそのままの形で存続させることはまずあり得ないでしょう。
しかし、企業体とそれに付随するサービスは別物という観点に立てば、企業そのものは解体するものの、OS及びアプリストアの運営等既存のサービスについては、経営陣の大刷新等による企業内部の自浄作用、及び言論の自由を保証するための規制措置等の対策が講じられた上での継続利用可能という形に収まれば、ユーザーにとっても望ましい展開になるでしょう。
ただ独占禁止と今回のような政治リスクの観点からすると、現在AndroidはGoogleに、iOSはAppleに一元化されているアプリストアの民主化は必要になってくると思われます。
AndroidについてはGoogle Play以外の選択肢を取ることが可能ですが、AppleについてはApp Store以外の選択肢を許容していないため、ここにはメスが入る可能性はあるのではないかと思われます。
あるいは、そこからさらに踏み込んで、iOS・Androidを取り潰して、スマホのOSは公的インフラとして国家主導でゼロから作り直すような事態にまで発展するようなことがあれば、スマホに絡むビジネスも全てゼロから立て直しになる可能性もあるかもしれません(全くの想像ですが)。
いずれにしろ、今回の大統領選挙不正の摘発でバチカンにまで乗り込んだと言われているトランプ政権が、GoogleとAppleに独占された現在のスマホの世界をそのままの形で放置しておくことは考えにくいと思われます。
SNSにしてもスマホにしても、もはや1私企業のサービスを超えた社会インフラになっており、その社会インフラが著しい政治リスクを抱えているということが今回の大統領選挙で明らかになったわけですから、そのリスク対応策として抜本的な改革が行われることだけは間違いないと思います。
現時点では先の見通しが全くわかりませんが、当社のビジネスのみならず、全世界的に甚大な影響を及ぼす可能性があると思われますので、状況を注視していきたいと思います。
ただ、短期的には世界全体に大激震が走る可能性が高そうですが、政治リスクを抑制して、自由でオープンな社会インフラとしてスマホの世界が再構築されれば、長期的に見れば必要な立て直しだったということになると思われます。