最近ちまたでは「ロジカルシンキング」ということがよく言われています。
では、この「ロジカルシンキング」を一言で言うと、何なのかおわかりになりますでしょうか。
「論理的思考力」と言う方もおられるかもしれませんが、それは「ただ日本語に訳しただけやん!」という話ですので、残念ながらそうではありません。
実は、「ロジカルシンキング」を一言でいうと、「言葉『だけで』自分の言いたいことを伝える力・考え方」なのです。
物事を伝えるには、「言葉」だけではなくて、特に日本では「空気を読む」とか言われますので「場の空気」とか「表情」など、色々な手段があります。
そして、これは誰が言っていたか忘れてしまいましたが、驚くべきことに、実は「言葉」というのは、物事を伝える手段としては一番弱いらしいのです。
(注)後から調べたら「神との対話」という本に書いてありました。ちょっと怪しい本ですがなかなか面白いことが書いてありますので、機会があれば読んで損のない本だと思います。
感情と思考と経験のすべてが失敗したとき、最後に言葉が使われる。言葉はじつは、最も非効率的なコミュニケーション手段だ。最も曲解されやすいし、誤解されやすい。どうしてか?それは言葉の性質のためだ。言葉はただの音にすぎない。感情や思考や経験の代用だ。シンボル、サイン、しるしでしかない。真実ではない。ほんものではない。
(神との対話 サンマーク文庫 P21)
では、なぜ一番伝える力が弱いはずの「言葉」を使う「ロジカルシンキング」が流行っているのでしょうか。
これはぼくが申し上げるまでもなく、今の世の中は「グローバル化」とか言われていて、色んなバックグラウンドの人たちと仕事をしたり、会話をしたりする時代になっています。
そんな状況において、「空気」とか「表情」とかというのは、「言葉」よりもより多くの物事を伝えることが出来ると言うけれど、その解釈の仕方というのは、その人のバックグラウンドによって変わってきてしまう。
ですので、どんなバックグラウンドの人たちにも自分の言いたいことをわかってもらうには、表に出てくる明示的な「言葉」を使うしかないということで、「言葉だけで」自分の言いたいことを伝える「ロジカルシンキング」が流行ってきているということだと思われます。
従って、「ロジカルシンキング」の要諦は何かというと、言葉だけで「伝える」ということなのです。
そして、そのやり方として、「結論を前に持ってくる」だとか、「MECE(ミーシ―)」と言う漏れなく・ダブりなく考えるための「テクニック」があるわけです。
ところが、ぼくも会社員時代はそうでしたが、こと「ロジカルシンキング」と声高に叫ぶ人に限って嫌な奴が多いと言われたりします。
では、その原因は何なのでしょうか。
それは、「ロジカルシンキング」の本質を理解しないまま、「テクニック」に終始してしまうことにあります。
つまり、自分は「ロジカルシンキング」の「テクニック」を使ってちゃんとやっているから、それがわからない相手が悪いと断じてしまう。だから「嫌な奴だ」と言われてしまうのです。
「ロジカルシンキング」というのは、あくまで「言葉だけを使って自分の言いたいことを伝えること」ですので、相手に伝わらなければ、いくら高尚な「テクニック」を使っても全く意味がないわけです。
ということは、「ロジカルシンキング」に必要なことは何か。
「テクニック」は、それはそれで大事ですが、実はそれ以上に「自分が伝えたい相手の立場に立つ」ということの方が大事になってくるのです。
これは何の秘策でもない、至極当たり前の話ではあるのですが、実はこれこそが「ロジカルシンキング」の要諦なのです。
ですから、極端なことを言うと、ちゃんと「言葉」で伝わるのであるならば、「テクニック」なんかは、はっきり言ってどうでもいいわけです。
ぼく自身も自戒を込めて「策士策に溺れないように」気をつけなくてはいけないなと思いました。